病院のHVAC設備更新により感染リスク低減と快適性向上を両立

医療現場の感染リスクを下げるために一定の湿度を保ちつつ、手術室の温度を外科医にとって快適な温度に調節することができるよう、いくつかの提案の中から最適なソリューションが選択、実行に移された事例です。

 

課題

感染リスクを最小限に抑えるために、メディケア&メディケイドサービスセンター(CMS)では、手術室の相対湿度を60%以下に維持することが大変重要であるとされていました。

キングスドーターズメディカルセンター(KDMC)は、患者のケアを改善してゆくというコミットメントに従って全手術室をモニタリングした結果、既存の設備で手術室の相対湿度を60%以下に維持できることを確認しました。一方、殆どの外科医は手術室の快適な温度として、16.6℃〜18.8℃を希望していましたが、室内温度は20℃以上が保たれていることが通常でした。

「手術はとても重労働なので、外科医にとって快適な環境を整えていく必要がありますので、当病院は手術チームの希望を満たすことと、CMSの相対湿度基準に準拠することによって、手術室の快適な環境を実現することを約束しました。」と、KDMCのCEOであるアルビン・フーバー氏は述べました。

ソリューション

KDMCにおける設備関連ソリューションの豊富な実績から、病院はスコットC.ウッズアンドアソシエイツ(SCWA)とミーティングを持ち、エネルギー効率と費用対効果が最も高い方法でチラープラントの信頼性を向上させることと、相対湿度と室内温度に関する課題を解決するという目標を共有し、同時に病院のチラープラントを100%冗長化するプロジェクトを立ち上げました。

ソリューションの検討

SCWAは最初にエアサイドシステムの改修を検討しましたが、シャットダウン時間と高コストから、この案は見送られました。そこでSCWAはトレインにチラープラントソリューションを求めました。 トレインはまず、チラープラントをブラインチラーシステムに更新することを検討しましたが、コストが高くメンテナンスにも手間がかかるため、この方法も採用されませんでした。 最終的に、ブラインを使用せずに病院全体に1.39℃の冷水を供給することが可能な大型のTrane® CenTraVac® ターボ冷凍機に更新するという案が採用されました。 「ブラインを使用せずに既存の小型チラーを新しい大型ターボ冷凍機に更新した場合、コストを最小限に抑えながら、信頼性と柔軟性を両立することができます。」と、SCWAのスコットウッズは述べました。

信頼性の向上、大容量化、冗長化

病院で使用されていた古い小型チラーは、最新式の、大型、低流量、低温のTrane® CenTraVac® ターボ冷凍機(475USRt)に更新されました。アップグレードされたチラープラントは、信頼性の向上とチラープラントの100%の冗長性のために、新しく導入されたTrane® CenTraVac® ターボ冷凍機(冷水温度1.39℃、475USRt)と、既存のトレイン製ターボ冷凍機(冷水温度5.56℃、475USRt)で構成されます。 ソリューションを慎重に検討した結果、理想的な手術室の室内環境を、最小の設備投資と運用コストで実現することができました。また、病院のチラープラントの冗長化と信頼性の向上というもう一つの目標も同時に達成しました。

効率的な設計で最適な環境を維持

低流量、低温の冷水システムは、KDMCの現在および将来のニーズに対応するために、幅広い条件下で動作するように設計されています。 Trane® CenTraVac® ターボ冷凍機は、1.39℃で業界最高効率(全負荷、部分負荷)を達成し、ブラインを使用せずに冷水温度の維持することにより、手術室の相対湿度を50〜60%に保つことと、手術チームが手術室の温度として望ましいと考える16.7℃に調節可能な柔軟性を提供しています。

結果

このプロジェクトにおいて、Trane® CenTraVac® ターボ冷凍機(冷水温度1.39℃、475USRt)はMcLain Plumbing社によって設置され、温度、湿度ともに理想的な手術室環境が実現されました。今回新たに導入されたターボ冷凍機は容量が大きく、病院全体の冷却能力の増強と、冗長性、信頼性、および将来の病院拡張時を見据えた柔軟性が向上しました。手術室は、室温16.7℃〜18.9℃、相対湿度50〜60%で管理されています。これらは、リアルタイムモニタリングと病院管理者による5分毎の記録、手術前には主任外科医により確認、記録が行われています。病院での感染率は同地域の平均を下回っており、院内環境に関する苦情は殆どなくなりました。新しい1.39℃の冷水システムは、ここ3年のミシシッピ州における高湿度の夏季においても、結露の問題なく稼働しています。 「新しい1.39℃のトレインチラーを設置する前に、手術室の相対湿度が60%を超えないようにするには室温を20℃以上にする必要があったため、外科医からは毎日の様に苦情が寄せられていました。1日に1つの手術室に関して4〜5件の苦情を受けることもありましたが、今回のアップグレードで、通常時は手術室の環境に関する苦情は1ヶ月に1回あるかないかという状態となりました。外科医は手術室の相対湿度50%~60%の間に保った状態で、室温を16.6℃から18.8℃の間で調節することができます。」とKDMCの施設エンジニアのディレクターであるロニー・キリングスワースは述べています。

ウッズはこのコメントに次のように付け加えました。「私は当病院と今回のプロジェクトチームを先駆者だと考えています。今回のプロジェクトで構築したシステムとその運用方法の導入は州全体で初めてのものです。」